「まずはカジュアルにお話ししませんか」
外資系のリクルーターから、こんな連絡が来たことはありませんか。
私は、この一文を本気で「雑談のお誘い」だと思っていました。
だから、手ぶらで行きました。そして、その後の連絡は来ませんでした。
あとで分かったのは、単純な事実です。カジュアル面談は、たいてい選考の一部です。
落とすための場ではありませんが、次に進める人を選ぶ場にはなっています。
この記事では、相手の3タイプ・実際に聞かれる5つの内容・やりがちな3つの失敗・30分でできる準備・断り方をまとめます。
構えなくて大丈夫です。準備すべきことは、そんなに多くありません。
1. 【結論】「選考ではない」は本当だが、評価はされている
最初に結論から書きます。
カジュアル面談は、合否を出す場ではありません。これは本当です。
ただし、面談のあとに社内で共有されるメモは残ります。
そこに「経歴が要件と合わない」「志望度が低そう」と書かれれば、正式な応募には進みません。
つまり、落とす場ではないけれど、進めるかどうかは決まる場です。
言い換えると、こうなります。
> 「じゃあ、結局ふつうの面接と同じですか?」
いいえ、そこは違います。ふつうの面接は、あなたが評価される場です。
カジュアル面談は、お互いに情報を交換する場です。こちらから聞ける量が、面接よりずっと多い。
この違いを使いこなせるかどうかが分かれ目になります。では、まず目の前にいる相手を見分けるところから始めます。
2. 目の前にいるのは誰か(相手は3種類ある)
「カジュアル面談」と一言でいっても、相手によって性質が変わります。
まず、これを見分けてください。
2.1 相手のタイプで、面談の意味が変わる
| 相手 | 立場 | 面談の性質 |
|---|---|---|
| 社内の採用担当 | その会社の社員 | 母集団づくり。合いそうなら選考に案内する |
| 転職エージェント | 外部の仲介者 | 案件の紹介。決まると報酬が出る立場 |
| 配属先の上司候補 | 現場の管理職 | 実質の一次面接。その場で見ている |
いちばん注意が要るのは、3つめです。
現場のマネージャーが出てくる面談は、呼び方がカジュアルなだけで、中身は面接だと思ってください。
外資系では、この現場マネージャーが最初に出てくることが珍しくありません。日系より、現場の裁量が大きいためです。
2.2 どこから声がかかったかで、相手は推測できる
見分け方はシンプルです。
- 求人サイト経由の連絡 → エージェントの可能性が高い
- 会社のドメインのメールアドレス → 社内の採用担当
- 面談の招待に、部署名や役職名が入っている → 現場の上司候補
判断がつかないときは、面談の最初に聞いてしまって構いません。
> 「本日は、どういったお立場からお話を伺えるのでしょうか」
失礼にはなりません。相手の立場が分かるだけで、こちらの話し方を変えられます。
外資からの声かけは、ビジネス向けのプロフィールサービス経由で来ることも多くあります。その動線については外資転職のLinkedIn活用法5選に書きました。
私が失敗したのは、この見分けをしていなかったときでした。
前の会社で終電続きの生活をしていたころ、外資のリクルーターから連絡が来ました。文面は本当にやわらかく、「まずは情報交換だけでも」と書いてありました。
当日、私はメモもせず、会社について何も調べずに行きました。相手は現場のマネージャーでした。
「今の業務で、何人くらいのチームを見ていますか」と聞かれて、答えに詰まりました。数字を何も持っていなかったからです。
その場は和やかに終わりました。そして、それきりでした。
英語で落ちたわけではありません。日本語の質問に、答えられなかっただけでした。
では、その場で実際に何を聞かれるのか。5つに絞ります。

3. カジュアル面談で実際に聞かれる5つのこと
雑談から入りますが、だいたい次の5つに着地します。
3.1 今の仕事の内容と規模
いちばん高い確率で聞かれます。
答えるときは、担当業務 → 規模の数字 → 自分の役割の順で30秒から60秒。
「営業をしています」だけだと、相手は何も判断できません。「取引社数30社を担当していて、うち上位10社の窓口をしています」まで言うと、次の話につながります。
そのまま使える形にすると、こうなります。
> 「現在は法人営業として、取引社数30社を担当しています。うち上位10社の窓口を2年ほど任されていて、直近は新規の立ち上げにも入っています」
30秒で足ります。ここで長く話すと、こちらが聞きたいことを聞く時間がなくなります。
3.2 転職の温度感(いつごろ動きたいか)
「今すぐではないんですけど」と正直に答えて大丈夫です。
外資のリクルーターは、半年先、1年先の候補者もふつうに管理しています。急かすために聞いているわけではありません。
答え方は、これで足ります。
> 「すぐに動くつもりはありませんが、いい話があれば伺いたいと思っています」
ただし、「まったく考えていません」と言い切ると、そこで話が終わります。
3.3 希望する条件(年収・勤務地・働き方)
ここが少し危ないところです。
その場で低い数字を言うと、それが基準になります。
現在の年収を聞かれたら事実を答えて、希望は「役割に応じてご相談させてください」で止めておいて構いません。
カジュアル面談の段階では、条件を確定させる必要はまったくありません。
3.4 英語をどれくらい使っているか
外資なので必ず出ます。ただ、聞かれているのは点数ではありません。
「今、どの場面で英語に触れているか」です。
読むだけならできる、会議は聞くだけ、まったく使っていない。どれでも正直に答えて大丈夫です。
私自身、TOEICは450点台のまま外資系に移りました。点数そのものより、いま英語にどう接しているかのほうが話題になります。
3.5 こちらから何を聞きたいか
カジュアル面談の主役は、実はここです。
面接では聞きにくいことを、この場では聞けます。
- そのポジションは増員か、後任か
- チームの人数と、上司にあたる人は誰か
- 英語を使う頻度は、実際どれくらいか
- 評価はどういう仕組みか
聞き方の例も置いておきます。
> 「このポジションは増員でしょうか、それとも後任の募集でしょうか」 > 「チームは何名で、レポート先はどなたになりますか」 > 「英語を使うのは、会議・メール・資料のうちどれが多いですか」 > 「評価はどれくらいの頻度で、誰が決める仕組みでしょうか」
カジュアル面談で、こうした質問を嫌がられることはまずありません。
むしろ「よく調べている人」として記録されます。私の経験では、ここで質問が多かった面談のほうが、そのあとの話が早く進みました。
もらえる情報が多いほど、応募するかどうかの判断が正確になります。
もし事前に求人票をもらえていたら、そこから質問を作るのがいちばん早いです。読み方は外資系求人票(JD)の読み方にまとめました。
聞かれることが分かったところで、逆に「やると損すること」を見ておきます。
4. カジュアル面談でやりがちな3つの失敗
私を含め、多くの人がやってしまうパターンが3つあります。
4.1 手ぶらで行く
「カジュアル」の一語で気を抜くと、これが起きます。
必要なのは資料ではありません。自分の数字を3つ(規模・期間・結果)だけです。
紙でもスマホのメモでも構いません。手元にあるだけで、答えが変わります。
4.2 前職の愚痴で盛り上がる
相手が共感してくれると、つい話しすぎます。
しかし、メモに残るのは共感ではありません。「不満が多い人」という一行です。
不満は事実として言ってよいので、最後は「だからこうしたい」で終える。これだけで印象が変わります。
4.3 その場で希望年収を下げてしまう
「いくらでも大丈夫です」は、謙虚ではなく情報です。
相手はその数字を持ち帰ります。あとから上げるのは、かなり難しくなります。
> 「でも、強気に言って嫌われませんか?」
嫌われません。外資では、条件を言うのはふつうの手続きです。むしろ、言わない人のほうが不思議に見られます。
ただし、根拠のない高い数字を出すのも逆効果です。
求人票に金額の幅が書かれていれば、その範囲で考えます。書かれていない場合、現在の年収を基準に置いて、上げ幅は面接が進んでから詰める。これが安全です。
では、当日までに何をしておけばよいか。30分で足ります。

5. 30分でできる5つの準備
やることは5つだけです。前日の夜で間に合います。
- 相手の立場を確認する(招待メールの署名から、社内の人か外部かを見る)
- 自分の数字を3つ書き出す(規模・期間・結果)
- 会社概要を5分だけ見る(事業内容と、日本法人の規模)
- 聞きたいことを3つ用意する(ポジションの背景・チーム構成・英語の頻度)
- 希望年収の下限だけ決めておく(口には出さない。自分の中の基準として)
5つめが効きます。基準がないと、その場の空気で数字が動きます。
オンラインで行われることも多いので、当日はこの3つも見ておいてください。
- 開始5分前に接続を確認する(音声のトラブルがいちばん多い)
- 静かな場所を確保する(カフェは音を拾います)
- メモは画面の横ではなく、手元の紙に書く(視線が泳ぎません)
服装は、相手が私服でもこちらは襟のあるシャツで十分です。スーツまでは要りません。
準備が終わったら、あとは面談後の判断です。
6. 面談のあと、進むか断るかの分かれ道
カジュアル面談のいいところは、断ってもいいことです。
正式な応募ではないので、辞退という扱いにもなりません。
6.1 進むと決めたら、24時間以内に返信する
外資の採用は動きが速いです。返信が遅いと、候補者リストの下のほうに移ります。
文面は、これくらいで十分です。
> 本日はお時間をいただき、ありがとうございました。 > お話を伺い、ぜひ選考に進ませていただきたいと考えております。 > 職務内容の詳細をお送りいただけますと幸いです。
長い感想文は要りません。進みたい意思と、次に欲しいものが書かれていれば伝わります。
6.2 見送るときは、理由を一言だけ添える
断るときも、関係を切る必要はありません。
> ご連絡ありがとうございました。お話を伺い、現時点では今の職務を続けたいと考えております。またご縁がありましたら、ぜひお声がけください。
これで大丈夫です。外資のリクルーターは、数年単位で候補者を覚えています。
私の場合、一度断った相手から、2年後に別のポジションで連絡が来たことがありました。断り方を丁寧にしておくと、そういうことが起きます。
進むと決めたあとの流れは、日系と少し違います。回数と順番は外資系の面接回数と流れにまとめています。
ここまでの内容を、最後に整理します。

7. まとめ|カジュアル面談は「情報をもらいに行く場」
この記事の要点です。
- カジュアル面談は合否を出す場ではないが、進めるかどうかは決まっている
- 相手は3種類。現場マネージャーが出てきたら、実質は面接
- 聞かれるのは、仕事内容・転職の温度感・希望条件・英語の使用場面・逆質問の5つ
- 仕事内容は規模・期間・結果の数字を3つで答える
- やりがちな失敗は、手ぶら・愚痴・その場で年収を下げるの3つ
- 準備は30分。希望年収の下限だけは、自分の中で決めておく
- 断ってもよい。丁寧に見送れば、数年後に別の話が来る
カジュアル面談は、値踏みされる場ではありません。
こちらが情報をもらいに行く場です。応募する前に、中の人に質問できる機会は、ほかにあまりありません。
私が手ぶらで行って失った1回は、英語力の問題ではありませんでした。
自分の仕事を、数字で説明できなかっただけです。
今夜やることは、ひとつだけ。
「担当している規模・期間・結果」を、スマホのメモに3行で書いておいてください。
次にカジュアルなお誘いが来たとき、その3行がそのまま武器になります。

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